2015年8月7日金曜日

オリンピックロゴ問題。問題は盗作かどうかじゃなくてだな

「国民の皆さんに祝福されるオリンピックにしなければならない」と言って会場を白紙撤回したまではいいが(それもさらに色々物議を醸してるが)またケチがついた。

まず発表前後の流れから

東京五輪エンブレム発表に会場どよめき えっJリーグ!? http://www.hochi.co.jp/topics/20150725-OHT1T50021.html 

午後7時すぎ突然、舞台上が暗転し、彩り鮮やかにライトアップされ、スモークの中から巨大な五輪、パラリンピック2通りのエンブレムのデザインが舞台に現れた。大仰な演出に対して、やや地味で、Jリーグのロゴマークと少々似たようなデザインに広場に訪れた多くの観衆からは、何とも言えないどよめきが起きた。
観衆からして既に「は?なにこれ?」と思ったということだろう。この時点では盗作云々の話は出てない。Jリーグとはよく言ったもので、アルファベット1文字モチーフ。

黒はダイバーシティ(多様性)を、大きな円は一つになった世界を、赤い円はハートの鼓動を表現しているという和風なデザインだが識者からは賛否両論の声が上がった。漫画家のやくみつるさんは「暗い。厳かではない。白紙撤回をお願いしたい」とばっさり。一方で、近現代デザインに詳しい武蔵野美大の柏木博教授(69)は「デザインは幾何学的な構成になっており、きちんとまとまっている」と評価した。
柏木博教授の言っていることは、素人目にも明らかだ。ソリャソーデスネ。その上で地味だ。やくみつる氏は「暗い」と一蹴している。厳密にいうと教授のこの発言も褒めてるとはいえない。「当たり障りのない言い回し」を選んだらそういう発言になった、と解釈もできる。

この時点で撤回するべきだったのだろう。104作品から選んでこのザマかと思わないでもない。正直他のデザインが見たい。

そして問題の盗作疑惑である。

「盗作だ」ベルギーのデザイナーが法的措置へ 2020年東京オリンピックのエンブレム http://www.huffingtonpost.jp/2015/07/29/emblem-plagiarism_n_7900370.html

ベルギー東部のリエージュ劇場のロゴ(左)を制作したオリビエ・ドビさんが、東京オリンピックのエンブレム(右)がデザイン・ロゴともに酷似していると指摘した。ANNの取材に対して彼は、「どんなケースであっても『盗作』と言える。もちろん、何らかの条件が偶然重なることもあるが、(今は)世界のどこにあるものも手に入る時代、疑問を抱かざるを得ない」と話した。

Tの文字がモチーフ。右上のマル。素人目には共通点は多そうに見える。

片やT TOKYO 2020 。どう見てもトウキョーのTだろうと思わせる。

片やTHEATRE DE LIEGE。T+Lのアルファベットを組み合わせたモチーフなのだろう、とは容易に想像はできる。しかもどうやら元は王立劇場であったようだ。もちろん王立弁護士も付いてるという。

東京オリンピックのロゴを巡る騒動を見て、改めて著作権侵害の非親告罪化はヤバいと思った http://blogos.com/article/125829/

ここでいう「告発マニア」とはようするに、自分の嫌いな創作者や作品を攻撃するネタとして「アイツのこの作品は、○○に酷似している、著作権侵害だ!」とか「アイツは過去に某イベントで○○の同人作品を作っていた、著作権侵害だ!」などと告発することをライフワークにする人のことだけれど、山田議員と話した際も、そのような後ろ暗い情熱を持つ人は残念ながら一定数現れるのではないか、という議論になった。
繁雑なのでリンクしないが、平成19年に週刊少年マガジンで連載のメガバカ、画像編集ソフトを駆使して、元&パクリを検証している。

こういった連中を「比較厨」とでも呼ぶとすれば、彼らのモチベーションはおそらく比較そのものであり、製作者をどうこういう気はないのだろうと解釈している。

とはいえ今回は、「類似している既存のロゴ」の製作者そのものからの告発であり、事情がかなり違う。

五輪エンブレムをめぐる狂騒に落としどころはあるのか? http://blogos.com/article/126025/

最初に話題になったのは7月30日付けの朝刊。

「2020年の東京五輪エンブレムについて、ベルギー東部リエージュ在住のデザイナー、オリビエ・ドビさん(52)は29日までに、自身がデザインしたリエージュ劇場のロゴと『驚くほど似ている』と交流サイト、フェイスブックに投稿した。」(日本経済新聞2015年7月30日付朝刊・第42面)

発表当初は、そんなに大々的に取り上げられたわけでもなかった五輪エンブレムが、一気に新聞、テレビで取り上げられることになったのだから、実に皮肉なもの(隣に並ぶ「ベルギーの劇場のロゴ」がなければ、皆万々歳だったはずなのだが・・・)。
正直、小生も、オリンピックロゴの存在を全く知らなかった。この一件によって急激に注目を受けたのは因果なことだとしかいいようがないが。開催前に問題になったのは不幸中の幸いというべきだろう。

五輪エンブレム問題、佐野氏の対応に学ぶ「他山の石」 http://blogos.com/article/126096/

事が発覚したのは先月29日、ベルギー人のデザイナー、オリビエ・ドビさんがフェイスブックで、「自身がデザインしたリエージュ劇場のロゴと驚くほど似ている」投稿したことでした。すぐにこのニュースは国内に流され、佐野さんのサイトにはアクセスが集中しダウン。その放置と氏の“だんまり”状態に対して、web上では非難に近い声が次々と上げられたと言います。

今回の件に関して申し上げるなら、組織委員会の指示で黙らざるを得なかったのだとするなら、佐野氏は本当に気の毒です。運営委員会に悪者にされてしまったと言ってもいいでしょう。しかし自身の作品について疑念が投げかけられたのであり、仮に委員会が待ったをかけていたとしても、自身の問題として委員会に対して申し開きをする意味からも、氏単独でもコメントを先行させるべきではあったと思います。危機対応時に求められる判断能力とは、先を見通す力と同義語でもあります。
1週刊も黙ってたのは良くなかった。ツイッターアカウントは閉鎖、フェイスブックのページにもいわくありげなメッセージを残し、黙りを決め込んでいた。後にこれはアカウント盗難によるものだと弁明していたが、そんなもん記者会見を開く等いくらでも手はあるのだ。

5日にようやくアートディレクター御本人が出張って来る。報道によって微妙に切口が異なるのが興味深い。

五輪エンブレム問題 佐野氏が会見「盗用は事実無根」 http://blogos.com/article/126551/

佐野氏は「誓って言うが、アートディレクターとしてこれまでの知識や経験を集大成して仕上げた作品。ブラッシュアップを繰り返して世界に類のないエンブレムができたと確信した」と自負を見せた。

オリンピック公式ロゴとして「世界に類を見ない」はその通りなのだろう。しかし、本質的な問題はそこではない。

歴代オリンピックのエンブレムと比較しても、抜きん出て「躍動感がない」のは否めない。それは初日に、やくみつる氏と柏木教授が言ったとおりでもある。

そしてその一方で、何故「劇場」ロゴと似てるのか?って話なのだ。結論からいえば、「オリンピック感が皆無」「むしろ営利法人のロゴのセンス」だからだ。
  • 方や国際スポーツイベント
  • 方や劇場
フツーに考えたら似るわけがない。しかしどっちもアルファベットモチーフ。

五輪エンブレム問題 佐野研二郎氏が会見「盗用は事実無根」 http://thepage.jp/detail/20150805-00000002-wordleaf

本人から見ても似ていると思うかとの問いには、「要素は同じものがあるが、デザインに対する考え方が違うもので全く似てない」との見方を示した。佐野氏は、ベルギーの劇場ロゴはテアトルの「T」とリエージュの「L」を基調にしてつくっているが、五輪エンブレムは、正方形を9分割してつくっていると説明。「(ベルギーの作品は)そもそも見ていないので模倣ではない」と盗用であるとの指摘を否定した。また、パラリンピックのエンブレムと「対」になるデザインでつくったことを挙げ、オリジナリティの部分で問題はないとした。
元もと盗作として煽られた話だから、本人&関係者の弁明は「盗作ではない!」「法的に問題はない」に終始している。

が、既に国内外の心証はよくないだろう。そもそもその程度の弁明なら、1週間前に聞きたかった。

(3)「自分はベルギーに行ったことも、(模倣とされる)ロゴを一度も見たことない」 http://www.sankei.com/sports/news/150805/spo1508050022-n1.html

佐野さん「劇場のほうは『T』と『L』を主軸にしていると思います。こちらは、比較していただけるとわかると思いますが、真ん中の大きな垂直の帯がきちんとくっついている。向こうのはそこが離れている。たぶん、『T』と『L』で作っているからでしょう。そもそも見ていないので模倣ではないですし、デザインの考え方も違うので、背景の色などもすべて違います」
槙局長「まず、商標の問題についてはクリアになっています。そこで、著作物、オリジナリティーの問題になるのでしょうし、当事者としてコメントを控えたほうがいいのかもしれませんが、部分が似ているかどうかではなく、全体の印象として誤認性があるかということで、相手の出方がまだわかりません。(書簡の内容を問われ)書簡の中身はJOCとIOCに届いているところで、これから返答します。中身については開示できないのがルールになっています」
佐野さん「そうです。今回は東京で開催されるということで、赤い円を心臓の位置に置きかった。それで、右下の部分は、1964年のDNAを引き継ぐことに。安定性、調和が出るということでも、そこに置きました」
エンブレムがただのTだけになっちゃってる理由はまあそうなのでしょう。色だのデザインの趣旨だのを必死にアピールする佐野氏。しかしいえばいう程、「じゃあ何で似てんだよw」となる。

更に御本人は「似ても似付かない!」と言い張る。プロから見ればそうなんだろう。

繰り返すが、オリンピックエンブレムは「国民のためのもの」ではないのか。素人のためにデザインしたのなら(デザインは一般的にはそうだろう)素人が似てると言えば「負け」じゃないのか。佐野氏の自己満足は聞いてない。「これだから素人は..」とか煽っていいのか?

もちろん彼は行政から金をもらって仕事をしているわけで、国民は関係ないという主張は可能なのだが、それは彼の商業法人としての終りを意味するだろう。いずれにしても中途半端な言い訳ならするべきではなかった。

シンプルイズベスト。小生もそれ自体は認めるが、なぜオリンピックエンブレムが、ただのアルファベット1文字なのか。Tokyo, Tomorrow, 後なんだっけ?そんなの理由は小生にも思い付く。「類を見ない」アピールをするにはかなり物足りない。

他にもタ行の名前で始まる国家はたくさんある。
https://ja.wikipedia.org/wiki/国の一覧#.E3.81.9F.E8.A1.8C

仮にトルコオリンピックがあったとしても、Turkey, Tommow 、全く同じ事が言えてしまう。こんなものオリジナリティとは呼べまい。タンザニア、タジキスタン、タイ、ツバル、トーゴ、トリニダート、トンガに同じ。そんな後進国でオリンピックやらないよって?そんなマクロな話はしてない。

そして元もと直線が2本しかないアルファベットの何をデザインする気なのか。言えば言う程不利になる。

結論としては次の通りだ。
  • 「オリンピック」の
  • 「エンブレム」なのに、
  • 「アルファベットモチーフしかない」 
その時点でもう負け。似てるの似てないのとかどうでもいい。

最後に、似て非なる話題。オリンピックエンブレム問題に対して、捏造netgeekが当てつけのように出してきたエピソード。実際当てつけなんでしょう。ただこれは本質的に別件。

そっくりすぎて訴えられたタイのコーヒー屋台「スターバン」、スターバックスから新しいロゴをプレゼントしてもらってご満悦 http://netgeek.biz/archives/44726
  • スタバが本家
  • 割と露骨にパクっている
  • 本家とパクリが同業
  • パクリは、本家とは比べものにならない弱小
本家の余裕があればこそだ。