2015年6月14日日曜日

連続殺傷事件犯のその後

日本人は概ね「自分らは「善/善良」であり、「悪」を裁いて良い。」という感覚が根強く浸透している。それは国民的ドラマ、水戸黄門の長寿ヒットに現れている。

善が悪を裁く、という図式自体は否定しない。しかし「自身が善である」という感情は非常に危うく不安定である。戦争を起こす発想でもある。そして真に善良な者を追い詰める。

オレオレ詐欺の被害者なのに……70代男性、親族に責められ自殺 「一瞬で引き込まれた」手口 (1/3)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1504/08/news047.html

仮に一般市民すべてが「善良」であるとすれば、イジメなぞ存在しない。しかし残念ながらそうではない。加害の話だけではない、見て見ぬふりをしている連中も含んでいる。皆さんご存知のとおりだ。少なくとも義務教育圏内で、見たことも聞いたこともない、という人は殆どいないだろう。

これは善良が存在しないことを意味している。せいぜい「人畜無害」とでも言うべきだろう。逆に、殺人犯罪者だからといって「完全な悪」だとも思ってない。そもそも「凶悪犯罪者」相手に「善良な一般市民」あるいは「人畜無害」が「殺せ!」を連呼するだろうか。

しかもISISの一件では、「善良な国民」は概ね「人質の開放」の話しかしてない。

マスコミの扇動にまんまと載せられるところはむしろ「無垢」ですらあると言える。

選択的に殺人を認めることが「正義」とは到底思えない。故に小生は勧善懲悪そのものを否定している。

以上が、小生のスタンスの説明。ここからが本題である。


殺人犯罪者の「その後」が色々物議を醸している。

<柏連続通り魔>判決に拍手「また殺人できる」 竹井被告に無期懲役 千葉地裁
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150612-00010002-chibatopi-l12&fr=fb_oa_tpc

コイツがまた絵に描いたような凶悪犯罪者で、色々物議を醸している

竹井被告はこの日、腕の入れ墨を露出させたタンクトップ姿で歌を歌いながら入廷。裁判長から「静かにしなさい」とたしなめられた。判決の主文言い渡し後にも拍手し、「これでまた殺人ができる」と発言するなど不可解な言動を続けた。
この流れを読んで「あれ?ひょっとして死にたがり?」という気がしてしまった。「これでまた」ということは、「無期懲役でない想定」も連想させるわけだ。そんなに難しい推測でもないと思うが、ジャーナリズムとして「不可解な」ってことにせざるをえないのはまあ判る。

神戸連続児童殺傷事件、元少年が手記出版
http://www.huffingtonpost.jp/2015/06/09/seito-sakakibara_n_7548652.html

1997年に神戸市須磨区で起きた連続児童殺傷事件の加害男性(32)が、「元少年A」の名で手記「絶歌」(太田出版)を出す。犯行に至った経緯や事件後の生活、現在の心境などをつづっている。早ければ10日から書店に並ぶ。
太田出版の岡聡社長は「少年犯罪が社会を驚愕(きょうがく)させている中で、彼の心に何があったのか社会は知るべきだと思った」と出版の意図を説明。「本は本人の手紙を添えて遺族に届けたい」と話している。

手記は全294ページ。「精神鑑定でも、医療少年院で受けたカウンセリングでも、ついに誰にも打ち明けることができず、二十年以上ものあいだ心の金庫に仕舞い込んできた」として事件前からの性衝動を明かし、犯行に至るまでの自身の精神状況を振り返っている。
「心の金庫に仕舞い込んできた」という辺り、なかなかに優れたポエムである。これが本気であるなら、とりあえず毒気は無さそうとは言えるかも知れない。

もちろん被害者の遺族はそんな都合の良い見方はしない。


被害者の父である、土師守氏が出版中止を申し入れたらしい。神戸新聞に顔出しで載ってるらしいからその憤りたるや相当なものなのだろう。

神戸連続殺傷事件「元少年A」はなぜ手記を出したのか? 太田出版・編集担当者に聞く
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150613-00003240-bengocom-soci

ただ当初の抗議は、本を読んでいない、見てもいないという人たちばかりでした。6月12日になると、実際に書店で買って読んだという方から、『感動した』『参考になった』といった声も数は少ないですがありました」

前述の通り、小生は「漠然とした正義」を持ち合わせいない。持たないようにしてると言った方がただしい。故に、「著者が連続殺人犯」であることのバイアスは持たない。故にこの内容に関しての興味のみを持っている。

加害男性の手記「今すぐ出版中止を」土師さん 神戸連続殺傷事件
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150610-00000008-kobenext-soci

しかし、今回の手記出版は、そのような私たちの思いを踏みにじるものでした。結局、文字だけの謝罪であり、遺族に対して悪いことをしたという気持ちがないことが、今回の件でよく理解できました。
 もし、少しでも遺族に対して悪いことをしたという気持ちがあるのなら、今すぐに、出版を中止し、本を回収してほしいと思っています。
出版中止は残念ながら叶ってしまったようだ。残念ながら既にアマゾンでも楽天ブックスでも新品販売はしてない。

http://www.amazon.co.jp/%E7%B5%B6%E6%AD%8C-%E5%85%83%E5%B0%91%E5%B9%B4%EF%BC%A1/dp/4778314506

当然のことながら、レビュー欄には辛辣な言葉が並ぶ。星5はすべて皮肉という徹底振り。問題の太田出版も「完全自殺マニュアル」とか物騒な本ばかり出してるようだ。少年Aが「ここなら出版してくれる」と思ったとしたらなかなかの策士と言わざるをえない


その一方で、「読んでみた」という人も居る。4日目にして既に販売してないっぽいので、当日に滑り込んだのだろう。

元少年A『絶歌』よんでみた
http://bucchinews.com/subcul/5203.html

大藪春彦の引用をはじめとした薄っぺらい引用、薄っぺらい解釈。ほんとに凡庸で薄いサブカルさんそのものだ。彼がこの本で語る何らかの解釈全てが、実体験を通して生まれてきたというようなものではなく、どこかからの引用でしかない。そこは「懲役13年」のころから変わってないとも言えるかもしれないが。
少年Aは普通の人になってしまった
 変な話なのだが、私は医療少年院での治療はかなり効果があったのではないかという風に感じている。全編を通して、彼は内側から溢れてきた言葉を書き連ねているというより、世間に流布されている「少年A」という物語を必死になって演じようとしているようにしか読めない。
このブロガーの解釈は非常に興味深い。

「天才もオトナになったらただの人」という話もよくきく。散々イジメ加害をやっておきながら、「昔は俺もヤンチャしたなー」とか言い出すアレかも知れない。あれも微塵も反省してませんよね? 反省しないまま無力化してる例は存在するという好例。