2016年4月14日木曜日

「日本」の「技術」という妄想

一部の政治屋あるいはお偉いさんが特にそうなのだが、日本は技術が高い、という幻想が未だに根強い。

日本生産性本部の茂木友三郎という御仁の発言が象徴的であろう。

労働生産性、先進7カ国で最低 茂木友三郎生産性本部会長「勤勉な日本が…残念な結果」 http://www.sankei.com/economy/news/151218/ecn1512180027-n1.html

 また、経済協力開発機構(OECD)加盟国で比較すると、34カ国中21位。この順位は05年から続き、主要先進7カ国としては最も低い状況だ。茂木会長は、「日本は勤勉な国で、生産性が高いはずと考えられるが、残念な結果だ」と評価した。
さらに、産業別で見ると製造業では米国に対し、7割、非製造業では5割の水準にとどまっている。なかでも飲食・宿泊が26・8%、卸売・小売が42・9%となるなど、サービス産業が依然低水準だ。
茂木会長は「労働人口が減少する日本が国内総生産(GDP)600兆円を達成させるためにも、生産性の向上が必要で、特にサービス産業の改善が求められる」と語った。
御年81歳。サザエさんの時代から、昭和の時代を引っ張ってきた人なれば、こう考えるのは仕方がないのかも知れない。更に、日本人が勤勉=生産性が高い、これしか論理展開がない時点で、勘違いするのもまあ致し方ないことだろう。

この発言は、様々な人の琴線に引っかかったらしく、様々な人がツッコミを書いてるが、
結論から言えば、小生が納得できるものは当時には見当たらなかった。

勤勉さだけでは改善できない日本の低い労働生産性 http://www.huffingtonpost.jp/rochelle-kopp/labor-productivity_b_8865802.html

私には、日本はせっかくの優秀な労働力を非常に非効率に使っているように思える。無駄使いと言っても過言ではないだろう。日本は、自国で調達できる自然資源が少ないこともあり、労働力をうまく使うという意味で世界のリーダーになるべきだ。

「勤勉な」に対する反論は、上記の論調に終止する。

端的に言えば「労働者が実力を発揮できる環境を作ろう!」であり、言い換えれば「実力を発揮すれば日本人はまだまだ行ける!」と言う幻想を未だ持っていると言える。

これは労働当事者からの「俺には技術があるんだよ!」「使い方が悪いんだよ!」という弁明でもあろう。

日本人の技術について、具体的な事例について見てみよう。象徴的なのは次の事例だろう。何件か纏ってるが、そのうち一つ。ちょっと前まではそこそこ話題になったはず。iPhoneの加工の一部を、日本の町工場が担ってるという情報。

職人魂が凄い、世界に誇る日本の「町工場」! http://matome.naver.jp/odai/2134623412104586801

当初から『iPod』を研磨する小林研業は圧倒的な量を納め、歩留まりの高さと、破棄不良が皆無だったことも評価され、『iPod』の商品名の表示を唯一、承認される企業。

「これからは大量生産品はまずない。中国でできない難しい少ロットのものしか、国内の仕事がない。だから視野を広げるんだ」

最後の一言に注目。「日本の技術」で売ってる町工場は流石に危機感をお持ちのようだ。

ぼちぼち小生の考えを書いてもいいのだが、更に実は中国のメディアにも先を越されてしまったので、利用させてもらってサボることにする。

「匠の精神」を追い求め過ぎて衰退した日本の製造業―中国メディア http://www.recordchina.co.jp/a133152.html

20年ほど前、世界の家電市場では、日本のブランドがほぼ独占状態となっていた。そして、日本の「匠の精神」を、中国の企業の研究者が模範としてきた。しかし、ここ数年、日本の老舗ブランドの製品は、再起不能の状態に陥っている。
日本最大の総合電機メーカー・日立製作所で16年働き、現在、京都大学原子核工学、東北大学工学部などの非常勤講師を務める湯之上隆氏は、著書「日本型モノづくりの敗北」の中で、日本のIT製造業の数十年の栄誉と恥辱を振り返り、日本の製造業から4つの教訓を導き出している。うち、▽職人的な精神や技術者の技能に頼りすぎ、製品の標準化と汎用化をおろそかにし、低コストで大量生産する能力が圧倒的に不足していた▽性能と指標を過酷なまでに追求した結果、市場の実際のニーズのレベルを軽視し、必要のないコストを投入し、市場に変化が起きた時に研究開発の中で速やかに製品の調整を行えなかった―この2つは、「匠の精神」と関係がある。

お気づきだろうか。日本の技術あるいは製品開発を語る文脈では、実は「精度」の話しか出てないことに。
誤解を恐れずに言うなら「高品質の製品を愚直に作り続ける矜持」と言い換えても良いだろう。愚直であるなら、生産性が高まるわけがない。

生産性を高めるにはどうすれば良いのか。簡単である。最近では、厚切りジェイソンが、かなり頻繁にそして懇切丁寧に「日本人の愚かさ」を教えてくれているではあるまいか。

https://twitter.com/atsugirijason/status/710337256192606208

根本的な考え方の違いはここだな。誰も自分が本当にやりたいこと出来ない平和は要るかね?個人のない社会。一人が居ても居なくても同じ。蟻の巣。社会レベルとしてはよく見えるけど。みんな結局一人の人間ダロウ?居なくてもいい存在で満足出来るの?
https://twitter.com/atsugirijason/status/649486784917848064

幼稚園→周りと合わせろ
小学校→周りと合わせろ
中学校→周りと合わせろ
高校→周りと合わせろ
大学→周りと合わせろ
会社→周りと合わせろ
パターンパターン!見えてきたよ!
「やりたいことが分からない」とよく相談受ける理由。 
自分で考える機会が今までなかったから。
彼が言いたいのは、要するに日本の企業人は、「歯車でしかない」ってことだ。歯車が幾らがんばろうが、生産性に結びつくわけがない。
もっと根本的に考えなおさなければならないだろう。

さしあたって、「日本には技術がある」という妄想を捨てること。まずはそこからだろう。