2015年5月25日月曜日

経営者の心、従業員に知らず

解雇規制の緩和が様々な物議を醸している。しかしこの解釈は立場によって大きく事なる。

幾つかの意見を掻い摘んでみると、こんな感じになりそうだ。
  • 正社員の給与>非正規労働者の給与という格差
  • ブラック企業増加を招くだのなんだのかんだの
  • 自分を守る手段が無くなるのがどうたらこうたら
極論すれば、これらは全て「労働者」「従業員」としての意見である。早い話が「給料を貰う」立場の人だは。自分の生活を守る手段として、給料を貰えなければ困る&クビにしてもらっちゃ困る、そういう主張だ。個人の都合であり、この文脈では正しいか否かは問題ではない。ただの労働者の正義である。

問題はソコでは無い。
  • なぜ会社が潰れない前提なのか?
  • なぜ自分が解雇対象になる前提なのか?
小生はこれを「給料が天から降ってくるものだと思ってる人々」と分類してる。前述の「労働者」「従業員」と言った雇用形態がそれに該当する。そうでない立場はもう経営者(雇用主)しかない。給料を貰うか払うか。この間には日本海溝より深い溝がある。

経営者の苦労は、経営した人しか判らないと思われる。法人経営の究極の苦労は、人件費だろう。管理職になれば「金の流れ」は責任として知っては居るだろうが、所詮管理職も給料を貰う立場でしかない。

挙げ句、こんなことを言い出す

あなたの周りは大丈夫?会社を潰す社長7つの共通点
http://blog.livedoor.jp/maznami/archives/1000397736.html

  • 決断から逃げる。
  • 必要な時だけ連絡をしてくる、しかも大事なことが事後報告
  • 占いをまことしやかに信じている。胡散臭いコンサルが出入りする
  • 従業員に断りなく私の携帯電話番号を教えて質問させる
  • 赤字なのに節税に気がいく
  • お金がないのに高い家・クルマが欲しくなる社長・接待交際費が減らせない
  • 全てを明かさず、提供する情報をコントロールしたがる

否定はしないが、全ての項目に条件を付け足してもらいたい。「金があるのに〜」だ。

経営者が金の心配をするのは仕方ない、というか無理もないのである。経営経験者であれば説明する必要がない程に自明だが、そうでなければその気持ちはほとんど窺い知ることは出来ないだろう。仮に管理職として、ある程度「金の流れを把握」してたとしてもだ。

さもなければ横領事件など起こる筈がない。

以上について、今のところ、例外を見たことはない。

この思考実験は簡単だ。これを読んでどう思うかだ。

2015年3月30日 ある社長が、「会社をつぶして学んだこと」を話してくれた。
http://blog.tinect.jp/?p=12353

「そうだねぇ、いくつかあるけど、まず一つ目は「給与を払う側の気持ち」が、よくわかった、ってことかな。社員は毎月給料がもらえることをあたりまえだと思っているけど、顧客は毎月お金を払うことをあたりまえだと思っていない。この差を埋めるのは、とても難しい。」
「それから、2つ目は「利益」というものがどれだけ大事かわかった。サラリーマンの時は、「会社に大きな利益が出ると、自分の給料が減らされている」と思ったよ。でも、会社なんて、大きく税金も取られるし、社員の社会保険も払わなければならない。なにより、取引が突然なくなっても、社員には給料を払い続けなくちゃいけない。だから、会社に出来るだけお金を残しておきたい、ってものすごく思った。」

これを読んでどう思うか?
  • へーそーなんだ→給料が天から降ってくると思ってる人
  • それがどうした→給料が天から降ってくると思ってる人
  • わかるわー
経営者は給料を払いたくないわけじゃない。そういう問題ではない。雇用主の責任として、雇用対価を「払わなければならない」しかも「全員に」だ。この大変さを理解できる人なら、解雇規制の緩和は歓迎だろう。

従業員は中々判ってもらえないが、何もないところから給料が出るわけではないのである。

会社の資産は少しでも長く温存して、少しでも長く給料を払い続けなければならない。これはもちろん経営者の義務であり都合でしかない。従業員はぶっちゃけクビに出来たほうが良い。そして残った従業員に給料を払いたい。これは会社と従業員を守るためでもある。

一方、従業員にしてみれば、少しでも金額は高い方がいいに決まってる。このギャップはどうにもならない。

しかも、最近は困ったことに、海外の情報も入ってくる。特にプログラマはグーグルとかフェイスブックに行くと給料がいいらしい!それに引き換え日本はどうなってるんだ!半分しか貰えないじゃないか!

もちろん小生はプログラマであるからして、その方面の情勢も気にはなる。他の業種なんか知りません。

しかし、ここで次に出てくるのは「日本では技術者の地位が低い」という「勘違い」だ。

円換算やら、お国の事情やら差し引いて、単純に比較すればそう見えるのは仕方ない。数字マジックとでも言いますか。

問題はそこではない。「ただの労働者」で「地位」とか言ってる時点でおかしいのだが。

これについては色々な有識者(有名人)が色々書いてる。

http://www.nurs.or.jp/~ogochan/essay/archives/977

http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50966702.html

作りたいモノが先に決まってて、ハイ判りましたと分担する限りは、ITゼネコンを逸脱できるわけがない。プログラマの雇用は手段の一つでしかなくなってるからだ。

小生はプログラマであるからして、もちろん「技術者の地位向上を目指す」ことに反論はない。ただぶっちゃけ日本じゃ無理でしょ?

本業プログラマだけが特別な存在ではない。正しくは「無くなってしまった」だ。PHPというプログラム言語のお陰でかなりの初心者でも仕事が出来るご時世になってしまった。もちろんそれで出来上がる成果物は推して知るべしなのだが、発注側と中請けと派遣業者はそんなことは知ったことではない。

未完成品と完成品は比べ物にならない。素人を注ぎ込もうが、素人を高値で売りつけようが、完成させれば勝ちだ。このため、現場はある程度のリスクを飲んで人を増やすしかない。
  • 洗練された動かないプログラムは
  • 汚ならしい動くプログラムには叶わない
この大原則が代わることは残念ながらないだろう。

「作りたいモノが先に決まってる」限りは無理だ。であれば「作りたいモノを決める」商売まで踏み込むしかない。日本古来の感覚からいえばそれは技術者の領分ではない。しかしグーグルやフェイスブックがやってるのはまさにそれだ。

嘘だと思ったら、グーグル&フェイスブックの入社試験でも受けてみればいい。受からなかったらそれが「〜では技術者の給料が高い理由」だ。

早い話が、小生の言い分は、

  • グダグダ言うならもうウザイから海外やら外資系やらに就職しろよ